身体障害者手帳と障害年金

障害年金の制度と支給額

障害になったことが理由で支給される公的年金が、障害年金です。

公的年金の支給理由は3つ、老齢年金、障害年金、遺族年金

老齢年金、障害年金、遺族年金の3つが、公的年金の支給理由です。

年金というと、高齢者がもらえる、老齢年金のことと考える人が多いと思います。
老齢年金とは、原則、65歳以上の人に支給される年金です。
公的年金には、この老齢年金の他にも、支給される年金があります。

年金加入者が、障害のある状態になった場合には「障害年金」が支給されます。
障害年金は、年金に加入したばかりの20代の人でも、障害状態になれば支給が開始されます。

その他にも、年金加入者が死亡した場合に、残された遺族に支給される、遺族年金も公的年金です。

日本では、20歳になると、全員が年金制度に加入することが義務付けられています。
年金制度は、20歳以上の全員が、毎月一定額の年金保険料を負担することで、高齢になった場合や、事故や病気で障害になった場合、生計を維持していた家族が死亡した場合に、年金を支給することで生活を支える制度です。

年金は、高齢者のためだけじゃないんです。

公的年金の制度、国民年金と厚生年金

国が運営する公的年金制度には、「国民年金」と「厚生年金保険」の2つがあります。

国民年金は、20歳になったら、全ての人が加入する基礎的な年金制度です。
自営業者でも、学生でも、失業中で無職でも、20歳以上なら、国民年金に加入します。

厚生年金は、会社員や公務員などが加入する年金制度です。
この厚生年金の加入者は、国民年金にも加入していて、厚生年金にも2重で加入している状態です。

障害基礎年金の支給額

障害基礎年金の等級は、1級と2級があります。

国民年金は、支払う保険料が一律です。
その分、年金をもらう時も、国民年金の支給額は一律です。

障害基礎年金の支給額は、本人の収入には関係なく、障害の等級と家族構成によって、一律で決まる定額です。

  • 障害基礎年金1級の年額は、約97万円。
  • 障害基礎年金2級の年額は、約78万円。

この障害基礎年金の支給額は、国民年金法の第33条によって決められています。
2級の支給額は、老齢基礎年金と同額、1級の支給額は、2級の1.25倍です。

さらに、受給者に子供がいる場合は、「子の加算」を上乗せでもらえます。

障害厚生年金の支給額

障害厚生年金には、1級・2級・3級の等級があります。

厚生年金は、支払う保険料が、その人の所得によって違います。
所得が多い人は、多くの保険料を支払い、所得が少なければ、保険料が少なくなります。
その分、年金をもらう時には、厚生年金は、所得が多く保険料を多く支払った人の方が、支給額は多くなります。

障害厚生年金の支給額は、報酬比例制度になっています。
厚生年金から支給される年金の支給額は、老齢年金でも、障害年金でも、収入が多く、保険料を多く支払った人は、それだけ多くの年金が支給される仕組みです。

  • 障害厚生年金1級の年額
    (障害基礎年金x1.25)+(報酬比例の年金額)x1.25+(配偶者の加給年金額)
  • 障害厚生年金2級の年額
    (障害基礎年金)+(報酬比例の年金額)+(配偶者の加給年金額)
  • 障害厚生年金3級の年額
    (報酬比例の年金額)
  • 障害手当金
    一時金(報酬比例の年金額の2年分)

障害厚生年金は報酬比例制度なので、障害になるまでの収入の状況によって、支給額が違います。

障害年金の等級が、1級と2級の場合には、障害基礎年金と障害厚生年金が、同時に支給されます。
障害年金の等級が、3級の場合には、障害基礎年金はないので、障害厚生年金だけの支給になります。

障害厚生年金2級

2級は、障害基礎年金と障害厚生年金が同時にもらえます。

障害厚生年金2級の支給額は、老齢厚生年金と原則として同額になります。
また、障害厚生年金3級の支給額も、2級と同額です。

ただ、障害と認定された時点で、厚生年金の加入期間が短い場合は、老齢厚生年金の支給額が少なくなってしまうので、加入期間を25年間とみなして支給額の計算をします。

例えば、会社に就職して1年目で、障害の状態になった場合には、加入期間が短いので、老齢厚生年金の見込額は、ほとんどありません。
しかし、障害厚生年金の支給額は、25年間(300ヶ月)加入したとみなして、計算するので、同一の給料で勤続25年と仮定した金額が支給されます。

障害厚生年金1級

1級は2級の1.25倍で、障害基礎年金と障害厚生年金が同時にもらえます。

障害厚生年金1級の支給額は、2級の1.25倍です。
この障害厚生年金の支給額を決めているのは、厚生年金保険法第50条です。

障害厚生年金の1級と2級では、65歳未満の配偶者がいる場合には「配偶者の加給年金額」が加算されます。
この配偶者の加給年金額は、1級と2級の両方で金額は同じで、約22万円です。
障害厚生年金の配偶者の加給年金額は、厚生年金保険法の第50条の2で規定されています。

障害厚生年金3級

3級は、障害厚生年金だけで、障害基礎年金はもらえません。

障害厚生年金の3級の場合には、配偶者の加給年金額はありません。
また、障害厚生年金の3級は、障害基礎年金がもらえないので、支給される金額が少なくなります。
そのため、最低保障額が約58万円と決められています。
報酬比例の障害厚生年金3級の支給額が、最低保障額を下回っても、最低保障額の約58万円が支給されます。
この最低保障額の約58万円は、障害基礎年金2級の4/3の金額と、厚生年金保険法第50条で規定されています。

障害手当金

障害手当金は、一時金だけの支給です。

この他にも、障害厚生年金には、障害手当金という区分もあります。
障害手当金の等級になると、一時金として、報酬比例の年金額の2年分が支給されます。
1回限りの支給で、継続的な年金の支給はありません。
もちろん、障害手当金の等級では、障害基礎年金はもらえません。

年金制度、加入者の種別

年金制度の加入者は、第1号・第2号・第3号の区別があります。

国民年金の加入者を「第1号被保険者」と言います。
この第1号被保険者は、自営業者や学生、無職の人などです。

厚生年金の加入者を「第2号被保険者」と言います。
この第2号被保険者は、会社員や公務員などです。

厚生年金の加入者に扶養されている配偶者を「第3号被保険者」と言います。
この第3号被保険者は、会社員の妻などです。
第3号被保険者は、厚生年金の加入者ではなく、国民年金の加入者になります。
しかし、第3号被保険者は、国民年金の保険料は自分自身が直接支払いません。
扶養されている配偶者が加入する厚生年金から国民年金へ、第3号被保険者の保険料が支払われる仕組みになっています。

障害年金の初診日が、どの年金制度の時点か。

障害年金をもらうためには、初診日の確認が重要なんです。

障害年金では、障害状態になった症状での初診日が、どの年金制度に加入していたかの確認が必須です。

  • 大学生になって、20歳になり国民年金に加入して、第1号被保険者になる。
  • その後に、会社に就職して厚生年金に加入して、第2号被保険者になる。
  • 結婚後に、会社を辞めて、夫の扶養に入り専業主婦になり、第3号被保険者になる。
  • そして、障害になって、障害年金を申請する。

障害の原因となった症状で、初めて医療機関を受診した日が、年金制度での「初診日」です。
この初診日の確認ができないと、障害年金がもらえません。

障害年金の受給者

障害年金を受給する障害者は、200万人以上います。

内閣府が発表した平成30年版「障害者白書」によると、身体障害者は全国で436万人となっています。
身体障害者の他に、知的障害者が108万人、精神障害者が392万人います。

厚生労働省の調査結果「厚生年金保険・国民年金事業年報」によると、平成29年3月末時点の、障害年金の受給者は、全国で211万人です。
障害年金の受給者は、年々増加しています。
うつ病などの精神障害で障害年金を増えているのが原因との指摘があります。

障害年金には、障害基礎年金と、障害厚生年金の2種類ありますが、
障害基礎年金だけ受給している人が、受給者全体のうち7割以上の、156万人です。

老齢年金では、約8割の人が、国民年金と厚生年金の両方を受給していますが、障害年金では、両方とも受給している人が、3割もいません。
この理由は、生まれつきの障害で、障害年金を受給する時には、障害基礎年金だけになるからです。

生まれつきの障害が原因の身体障害者でも、会社に就職すれば厚生年金に加入することはできます。
しかし、生まれつきの障害では、初診日が就職以前になるので、障害厚生年金を受け取ることができません。

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