音声機能・言語機能・そしゃく機能の障害の身体障害者手帳認定要領

      2016/09/26

身体障害者手帳認定要領、音声機能・言語機能・そしゃく機能の障害

A 音声機能又は言語機能の障害
1 診断書の作成について

診断書の様式の項目ごとに記入要領及び記入上の留意事項を記します。

(1)「総括表」について

ア 「障害名」について
機能障害の種類と( )の中に音声、言語機能障害の類型を記載します。
「音声機能障害」とは、主として喉頭レベルにおける声と発声にかかわる能力の障害をいいます。音声機能障害(喉頭摘出、発声筋麻痺等)と記載します。

「言語機能障害」とは、喉頭レベル以上の構音器官(口唇、舌、下顎、口蓋等)における発音(構音)にかかわる能力と、音声言語(話しことば)の理解(意味把握)と表出(意味生成)にかかわる能力をいいます。言語機能障害(失語症、運動障害性<麻痺性>構音障害等)と記載します。

参考:言語機能障害の類型…失語症、運動障害性構音障害、脳性麻痺構音障害、口蓋裂構音障害、その他の器質性構音障害、ろうあ、聴あ

イ 「原因となった疾病・外傷名」について
上記障害の直接原因である疾病名を記載します。
「喉頭腫瘍」「脳血管障害」「唇顎口蓋裂」「感音性難聴」等

ウ 「疾病・外傷発生年月日」について
発生年月日が不明の場合には、その疾病で最初に医療機関を受診した年月日を記載します。月、日について不明の場合には、年の段階でとどめることとし、年が不明確な場合には、○○年頃と記載します。

エ 「参考となる経過・現症」について
「経過」については、症状が固定するまでの経過を簡単に記載します。初診あるいは機能訓練開始日、途中経過の月日等の記載も望ましいです。

「現症」は、コミュニケーション活動の能力の程度を裏付ける客観的所見ないしは検査所見を記載します。ただし、客観的所見の代わりに観察結果でも足りる場合があります。

「現症」記載の参考:コミュニケーション能力の程度を端的に裏付ける検査所見や観察結果のみを簡単に記載します。以下に、検査又は観察項目、検査法を例示するが、すべて行うことはなく、必要と考えられるものの記載にとどめます。

「音声機能障害」
① 喉頭所見(必要なら咽頭部所見も含める。)
② 声の状態…失声、嗄声の種類と程度等
③ 発声機能…発声持続能力(時間)等
④ 検査法…音声機能検査、エックス線検査等

「言語機能障害」
① 構(発)音の状態…母音、子音等の正確性、発話全体としての会話明瞭度及び自然性(抑揚、アクセント、発話速度等)
② 構音器官の所見…口唇、舌、下顎、口蓋、咽頭等の運動機能と形態
③ 言語理解力…音声言語に関して、単語や文の理解ができるか否か(聴覚的理解)。日常的な単語、簡単な文、やや複雑な文等の視点から理解力の程度をみます。
④ 言語表出力…単語や文が言えるか否か(音声言語の表出)。日常的な単語、簡単な文、やや複雑な文、文の形式(構文又は文法)、文による具体的情報伝達(実質語の有無)等の観点から表出力の程度をみます。
⑤ 検査法…構音・プロソディー検査、会話明瞭度検査、構音器官の検査、標準失語症検査(SLTA)、老研版失語症検査、国立リハ版失語症選別検査など。

留意事項:「現症」については、個別の所見欄に該当する項目(別様式「聴覚・平衡・音声・言語又はそしゃくの機能障害の状態及び所見」の「3「音声・言語機能障害」の状態及び所見」)がある場合にはこの欄の記載を省略してよいです。この場合、所見欄には現症について詳細に記載することが望ましいです。
障害固定又は障害確定(推定)年月日は必ず記載してください。

オ 「総合所見」について
「参考となる経過・現症」又は個別の所見欄に書かれた現症の事項を総合して、その総合的能力が生活上のコミュニケーション活動をどのように制限しているかを記載します。現症欄に記載された事項では表現できない音声・言語機能障害の具体的状況の記載が必要です。すなわち、日常生活におけるコミュニケーション活動の実態を記載するが、それには家庭内(肉親間)あるいは、家庭周辺(家族以外)といった場で、どの程度のコミュニケーションができるか(レベル)の2つの観点から具体的に記載します(表1「障害等級と日常生活におけるコミュニケーション活動(場とレベル)の具体的状況例」参照)。
障害程度の認定には、この日常的コミュニケーション能力の程度の判定が核心となることを銘記してください。

2 障害程度の認定について

(1) 身体障害認定基準についての補足説明

ア 「音声機能又は言語機能の喪失」の定義は、音声を全く発することができないか、発声しても意思の疎通ができないもの、と解釈すべきです。

イ 言語機能喪失をきたす障害類型に、ろうあ、聴あ、失語症が挙げられているが、運動障害性(麻痺性)構音障害、脳性麻痺構音障害も含まれると解釈すべきです。

ウ 「音声機能又は言語機能の著しい障害」の項で、「具体的な例は次のとおりである。」以下を次のように改めて解釈すべきです。
(ア) 音声機能の著しい障害…喉頭の障害又は形態異常によるもの
(イ) 言語機能の著しい障害
1) 構音器官の障害又は形態異常によるもの(構音器官の障害には唇顎口蓋裂の後遺症による口蓋裂構音障害、末梢神経及び筋疾患に起因する舌、軟口蓋等の運動障害による構音障害、舌切除等による構音器官の欠損によるものなどを含む。)
2) 中枢性疾患によるもの(失語症、運動障害性(麻痺性)構音障害、脳性麻痺構音障害等。)

(2) 等級判定の基準

障害程度をどのように等級判定に結びつけるかについては必ずしも理解が容易ではありません。このことは診断書(意見書)を実際に作成するに当たって、現症と総合所見の記載内容にしばしば見られる混乱や、さらに等級判定が概ね総合所見に基づくことにも十分な認識が得られない結果になります。そこで表2に障害程度と等級判定の認定基準を対比させ理解の一助としました。

等級判定の認定基準は、日常生活におけるコミュニケーション活動の場とレベルの2つからの判断が不可欠です。場は、家庭(肉親又は家族間)、家庭周辺(他人との関係―但し、不特定の一般社会ではない)の2つの局面に限定されます。レベルは、残存する言語機能を表す言語活動の状態です。総合所見欄はその具体的な記載を求められるが、表1に幾つかの例を示したので参照してください。

B そしゃく機能障害
1 診断書の作成について

診断書の様式の項目ごとに、記入要領及び記入上の留意事項を記します。

(1)「総括表」について

ア 「障害名」について
「そしゃく機能障害(そしゃく・嚥下機能障害、咬合異常によるそしゃく機能障害)」と記載します。

イ 「原因となった疾病・外傷名」について
上記障害の直接の原因となる疾病名等を記載します。
記載例:「重症筋無力症」「唇顎口蓋裂」「舌腫瘍切除後の舌の欠損」等

ウ 「疾病・外傷発生年月日」…省略
エ 「参考となる経過・現症」について(エックス線検査、内視鏡検査等の所見を含む)
「経過」については、症状が固定するまでの経過を年月日を付して簡単に記載します。
「現症」については、主たるそしゃく・嚥下機能の障害の内容(「筋力低下によるそしゃく・嚥下機能の喪失」「咬合異常によるそしゃく機能の著しい障害」等)と、その程度を裏付ける客観的所見ないしは検査所見を記載します。
なお、これらの所見等の詳細については、別様式にある「聴覚・平衡・音声・言語又はそしゃくの機能障害の状態及び所見」欄に記載します。

オ 「総合所見」について
「参考となる経過・現症」又は個別の所見欄に書かれた現症の事項を総合して、生活上の食事摂取をどのように制限されているかを記載します。

(2) 「聴覚・平衡・音声・言語又はそしゃくの機能障害の状態及び所見」について

ア 各障害においては、該当する項目の□にレを入れ、必要事項を記述します。

イ 「4 「そしゃく機能障害」の状態及び所見」について(留意点)
(ア) 「(1)障害の程度及び検査所見」について
 1) 「① そしゃく・嚥下機能の障害」では、そしゃくあるいは嚥下機能の障害について判断することを目的としています。「b 参考となる検査所見」の「イ 嚥下状態の観察と検査」については、食塊ないしは流動物(bolus)の搬送の状態を観察します。また、その観察をエックス線検査あるいは内視鏡検査で行うことが理想的ですが、食事(水分)を摂取する場面を観察してもよいです。

(観察点)
・各器官の一般的検査(視診、触診、反射)
・口唇・下顎:運動能力(可動範囲、力、速度等)、不随意運動の有無、反射異常ないしは病的反射
・舌:形状(萎縮、欠損、線維束性収縮等)、運動能力、反射異常
・軟口蓋:挙上運動(鼻咽腔閉鎖機能の状態、鼻漏出、鼻腔への逆流)、反射異常
・声帯:内外転運動、梨状窩の唾液貯溜
・嚥下状態の観察と検査
・口腔内保持の状態
・口腔から咽頭への送り込みの状態
・喉頭挙上と喉頭内腔の閉鎖の状態
・食道入口部の開大と流動物(bolus)の送り込み

2)「② 咬合異常によるそしゃく機能の障害」では、咬合異常によるそしゃく機能の障害について判断することを目的としています。
「b 参考となる検査所見(咬合異常の程度及びそしゃく機能の観察結果)」については、以下の点から観察します。
ア) 「ア 咬合異常の程度」
 (観察点)そしゃく運動時又は安静位咬合の状態をみます。
 上顎歯列と下顎歯列の特に前歯並びに臼歯の接触・咬合状態、開口の程度等の異常な咬合関係をみます。
イ) 「イ そしゃく機能」

(観察点)
・そしゃく機能を定量的に簡便かつ正確に測定する方法はないので、そしゃくの3作用である食物の粉砕、切断及び混合の状態を観察します。
・そしゃく機能障害の状態:口唇・口蓋裂においては、歯の欠如、上下顎の咬合関係、口蓋の形態異常(前後、左右、上下方向の狭小あるいは狭窄化及び残孔)等を観察します。
3) 歯科矯正治療等の適応の判断を要する症例は、別様式に定める「歯科医師による診断書・意見書」を添付します。

(イ)「(3)障害程度の等級」について
 ここでは、そしゃく・嚥下機能の障害、咬合異常によるそしゃく機能の障害における診断内容が、3級又は4級のいずれかの項目に該当するかについて、最終的な判定をすることを目的とします。
該当する等級の根拠となる項目について、1つだけ選択することとなります。

2 障害程度の認定について

診断書の「そしゃく機能障害」の状態及び所見より、「そしゃく機能の喪失」(3級)、「そしゃく機能の著しい障害」(4級)を判断します。

(1)「そしゃく機能の喪失」
 そしゃく・嚥下機能の低下を起因として、経口的に食物等を摂取することができないため、経管栄養(口腔、鼻腔、胃瘻より胃内に管(チューブ)を挿入して流動食を注入して栄養を補給する方法)以外に方法がない状態をいいます。

(2)「そしゃく機能の著しい障害」
 「そしゃく・嚥下機能の低下を起因として、経口摂取のみでは十分な栄養摂取ができないために、経管栄養(口腔、鼻腔、胃瘻より胃内に管(チューブ)を挿入して流動食を注入して栄養を補給する方法)の併用が必要あるいは摂取できる食物の内容、摂取方法に著しい制限がある(注1)状態」又は「口唇・口蓋裂等の先天異常の後遺症(注2)による著しい咬合異常があるため、歯科矯正治療等を必要とする状態」をいいます。

(注1)「摂取できる食物の内容、摂取方法に著しい制限がある」と判断する状態について
 誤嚥の危険が大きく摂取が半固形物(ゼラチン、寒天、増粘剤添加物等)等以外は摂取できない状態又は開口不能のため流動食以外は摂取できない状態をいいます。

(注2)「先天異常の後遺症」とは、「疾患に対して手術、その他の処置を行った後もなお残存する後遺症」を意味します。

3 その他の留意事項

(1) 咬合異常によるそしゃく機能の障害について
判定の手順:障害程度の判定と歯科矯正治療等の適応の判定の2つの判定が含まれる。以下に実際の手順に従って説明します。

ア まず咬合異常によるそしゃく機能障害の程度を判定する。それには、身体障害認定の要件である①永続する機能障害を有すること、つまり、障害として固定すること、②日常生活活動に相当程度の制限があること、そしゃく困難で食事摂取(栄養、味覚)が極めて不利、不便になるもの、という2点を満たすか否かを判断します。

イ 次いで歯科矯正治療等の適応か否かを決めます。すなわち、上記そしゃく機能障害が歯科矯正治療、口腔外科的手術によって改善が得られるか否かを判断します。この法律は、口唇・口蓋裂等の患者の治療を福祉によって支援することを狙いとしていることを理解してください。

ウ 身体障害者該当の判定。上記「ア」の要件を満たし、さらに「イ」歯科矯正治療等の適応と判断された者を身体障害者に該当すると認める。

(注意事項)
①歯科矯正治療等の適応については、都道府県知事等の定める歯科医師の「歯科医師による診断書・意見書」(別様式)の提出を求めるものとします。
②歯科矯正治療等の適応と判断されても、そしゃく機能障害が軽微~軽度なら身体障害者に該当しません。
③軽度そしゃく機能障害(軽度咬合異常による。)は身体障害者に該当しません。
④身体障害者の認定は「歯科矯正治療等の適応あり」が基本条件であるから、認定する期間を指定し、再認定の時期を必ず記載する必要があります。この再認定は歯科矯正治療等の一応の成果が見られる「3か年」を目途にしており、再認定の徹底を期してください。

(2) 障害を認定できる時期
「そしゃく機能の喪失」または「そしゃく機能の著しい障害」の状態が固定して改善の見込みがないか、更に進行して悪化の一途を辿ると判断されるとき。

(3) 音声機能障害、言語機能障害及びそしゃく機能障害が重複する場合については、各々の障害の合計指数をもって等級を決定することは適当ではありません。

(4) 小腸機能障害を併せもつ場合については、必要とされる栄養摂取の方法等が、どちらの障害によるものであるか等について詳細に診断し、該当する障害について認定することが必要です。

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